2026-06-16
IQ68とは|境界知能と軽度知的障害の境目を当事者家族が解説
はじめに
私には26歳の弟がいます。弟のIQは68です。
実は、弟の「具体的なIQの数字」を私がはっきり知ったのは、つい最近のことでした。このブログを書き始めて、改めて家族で話したときです。それまで私は、弟が「苦手なことが人より多い人」だとは分かっていても、IQがいくつなのかを意識して生きてはきませんでした。
「IQ68」と検索してこのページにたどり着いた方は、自分や家族の数字を知って、その意味を確かめたいのかもしれません。あるいは「境界知能とは何か」を知りたいのかもしれません。
この記事では、専門書の言葉ではなく、IQ68の弟と26年間過ごしてきた家族として、「境界知能とは何か」「IQ68はどういう状態か」を書きます。
結論:IQ68とは何か(先にまとめ)
IQ68とは、ひとことで言うと 「境界知能(IQ70〜84)のわずかに下、軽度知的障害との境目にあたる数値」 です。IQは平均が100になるように作られていて、68はそこから離れた値です。
診断上は軽度知的障害の範囲に入りますが、70という線は人が決めた便宜的な区切りにすぎず、境界知能の人と同じ「普通に見えるのに、普通のことが難しい」状態を抱えます。日常会話や見た目では分かりにくいのが、いちばんの特徴です。
以下で、IQ68の弟と26年間過ごしてきた家族として、具体的に書いていきます。
境界知能とは(IQ70〜84)
境界知能とは、おおまかに言うと IQが70〜84の範囲 にある状態を指します。
IQは平均が100になるように作られていて、多くの人が85〜115の間に入ります。そこから少し下、「知的障害(おおむねIQ70未満)ではないけれど、平均よりは明らかに下」という層が境界知能です。
割合でいうと、人口の約14%。日本では 約1,700万人 が境界知能にあたると言われています。だいたい7人に1人です。決して珍しい存在ではありません。
ただ、境界知能は「病名」でも「診断名」でもありません。だから多くの場合、診断もつかず、支援にもつながらないまま、「ちょっと変わった人」「努力が足りない人」として見過ごされてしまいます。
IQ68はどこに入るのか
弟のIQ68は、厳密にいうと 境界知能(70〜84)の少し下 です。数字の上では「軽度知的障害」と呼ばれる範囲に入ります。弟も診断としては軽度知的障害で、療育手帳を持っています。
でも、です。
IQ68とIQ72の間に、はっきりした壁があるわけではありません。検査はその日の調子で数点動きますし、「70」という線は人間が決めた便宜的な区切りにすぎません。実際、手帳が取れるかどうかも、たった数点の差で変わってしまいます(参考: 境界知能 手帳なしで使える支援制度)。
だから我が家では、弟のことを「軽度知的障害」と呼ぶより、「グレーゾーン」と呼んでいます。数字で線引きするより、そのほうがしっくりくるからです。
境界知能の人も、IQ68の弟も、抱えている苦しみは同じです。「普通に見えるのに、普通のことが難しい」 という苦しみです。
数字より、日常でどう現れるか
IQ68という数字そのものには、あまり意味がないと私は思っています。大事なのは、それが日常でどう現れるかです。
弟の場合は、たとえばこんな場面です。
- 支払いや行政の手続きなど、仕組みを理解するのに人より時間がかかる
- 人に言われた冗談を冗談として受け取れず、真に受けて困ってしまうことがある
- 相手の頼みを断るのが難しく、お金や物を渡してしまって、人に利用されてしまうことがある
- 一度の説明では飲み込みきれず、同じことを何度か確認しないと不安になる
どれも、ぱっと見では分かりません。会話もできるし、人にも好かれます。だからこそ「なぜこれができないの?」と誤解されてしまう。これが境界知能・グレーゾーンの一番つらいところです。
“支援を足しすぎて疲れた”と感じたら。約30年分を1冊にまとめた有料ガイドがあります。
ガイドを見るIQという数字は、その人の入口を知るヒントにはなりますが、その人そのものではありません。
IQ68の子どもは学校でどう過ごすか(小学校・中学校)
「iq68 小学校」「iq68 中学生」と検索してたどり着く方も多いので、弟の学齢期のことを書きます。
弟は、学校のテストはほぼ0点に近い状態でした。勉強はほとんどせず、授業の内容を追いかけるのは難しかったと思います。
ただ、私が振り返って思うのは、勉強が苦手なことと、学校で居場所を失うことは別の問題だった、ということです。弟には友達がいて、私(兄)という理解者もいました。だから学校自体は楽しく通えていて、不登校にはなりませんでした。
IQ68の子にとって学齢期にいちばん大事なのは、テストの点数ではなく「安全な居場所と、分かってくれる人がいるか」だと私は思っています。点数はあとからでも取り戻せますが、自分を嫌いになってしまうと、それを取り戻すのは簡単ではありません。(関連: 境界知能の子の勉強・宿題との向き合い方 / 境界知能と不登校)
「境界知能 末路」と検索したあなたへ
この記事を読んでいる方の中には、「境界知能 末路」のような言葉で検索してきた方もいると思います。将来が不安で、最悪の結末を想像してしまう。その気持ちは、家族として痛いほど分かります。
だから、弟の「今」を書きます。
弟は今、仕事をしています。決して楽な道のりではありませんでしたが、月に25万円以上を稼いで、自分で生活しています。
もちろん、得意・不得意はあります。一般の人より自尊心が低くなりやすく、落ち込むこともあります。それでも、周りが定期的に話を聞き、「大丈夫だ」と支え続けることで、ちゃんと前を向いて生きています。
IQ68は、「末路」を意味する数字ではありません。支え方さえ間違えなければ、その人らしく生きていけます。
よくある質問
Q. IQ68は知的障害ですか?
診断の区切りでは、IQ68は軽度知的障害(おおむねIQ70未満)の範囲に入ります。弟も軽度知的障害の診断で、療育手帳を持っています。ただし70という線は便宜的なもので、境界知能(IQ70〜84)とのちょうど境目です。数字の上の分類よりも、本人が何に困っているかのほうが大事だと私は思っています。
Q. IQ68で療育手帳は取れますか?
検査時の数値や自治体の基準によりますが、IQ68は療育手帳の対象になりうる範囲です。一方、境界知能(IQ70〜84)になると手帳が取りにくく、使える支援が限られてしまいます(参考: 境界知能 手帳なしで使える支援制度)。
一番大事なのは「その人の特性を知ること」
26年間弟を見てきて、私がたどり着いた結論はひとつです。
IQという数字を知ることより、「その人が何が得意で、何に困るのか」を知るほうが、何倍も大事だ ということです。
同じ「IQ68」でも、得意なことも、つまずく場面も、効く声かけも、一人ひとり全く違います。一般論の「境界知能の人はこう」という情報だけでは、目の前のその人には届きません。必要なのは、その人だけの「取扱説明書」です。
私たち家族が作っているアプリ「ヨゾラ」は、相談するだけで、その人の傾向が少しずつ溜まっていき、その人に合った情報が見えてくるツールです。「うちの子(自分)はどういうタイプなんだろう」を知っていくための場所として使ってもらえたらと思っています。
数字に振り回されないでください。大事なのは、数字の向こうにいる「その人」を知ることです。
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