2026-08-22
境界知能の子が自立したあとの帰省|長期休みに実家へ呼び戻すとなぜ問題が起こるのか
はじめに
お盆や年末年始など、年に数回、家族が集まる機会があります。
自立して家を出た子にも、当然「帰っておいで」と声をかけたくなる時期です。
ただ、うちの家ではその期間が本人の自立にとっての落とし穴になったことがありました。
私の弟は26歳で、IQは68です。診断は軽度知的障害で、家族の中では「グレーゾーン」と呼んでいます。弟は今、実家を出て一人暮らしをしながら働いています。
この記事では、自立したあとの長期休みに、家族としてどう関わるかを書きます。
実家に帰るとき、弟には言わない場合がある
私が実家に帰るとき、弟にはあえて「帰ってこい」と言いません。
弟の状況によっては、私が帰ってきていること自体を伏せていたこともあります。
文字にすると冷たく見えると思います。兄が帰ってくるのだから弟も呼べばいい。家族なのだからそのくらい当たり前だと、一般的なご家庭ではそう思われるかもしれません。私自身も、以前はそう思っていました。
そう思わなくなったのは、一度失敗しているからです。
過去、迎えに行って問題が発生している
以前、私が実家に帰ったタイミングで弟を迎えに行ったことがあります。
そろそろ仕事にも慣れた頃だろうと思ったからです。事実、1年ほど同じ現場で、愚痴はありつつも継続して勤務している状況でした。 判断としては無理のないものだったと思います。
久しぶりに家族が揃って、弟も嬉しそうでした。
ただ、私が帰る日になっても、弟は実家から動きませんでした。そのまま居座ってしまったのです。
居心地がよかった分だけ、職場の悪口が増えていった
最終的には、嫌々職場に戻りました。
しかし、そこからがよくなかった。実家の居心地がよかったせいで、仕事の悪口が増えていきました。そして程なくして、職場から文字通り逃げ出してしまいました。
こういうことが、何度もありました。
私たちは「久しぶりに顔を見せてほしい」と思っただけです。悪意も油断もありません。それでも結果として、続いていた仕事を辞めてしまいました。
実家は、本人にとって一番居心地のいい場所です。 そこに戻る時間が長いほど、戻ってきた場所と今いる場所を比べてしまう。比べた結果が「仕事の悪口」という形で出てきて、最後は現場から離れる。うちではこの流れが繰り返されました。
だから今は、弟が落ち着いているからといって、こちらから迎えに行くことはしません。仕事を頑張るように促しています。
今回は、弟のほうから「仕事があるから帰れない」と言った
今回の帰省では、変化がありました。
弟が自分から、こう言ったのです。
「仕事があるから帰れない、ごめんね」
帰りたい気持ちはあったと思います。それを抑えて、この言葉が出てきた。
言葉の意味以上に、彼の中で起きている成長のほうがはるかに大きいと私は思っています。
だからこそ、今このタイミングで実家に遊びに来るように誘って、彼の集中を切るようなことはしたくありません。
呼ばないことと、家族の一員から外すことは違う
ここが、この記事で一番書きたいところです。
社会が教えてくれない、本当のこと。
きょうだい児が30年見てきた真実を、1冊にまとめました。
私たちは弟を家族の一員から外しているわけではありません。
私が実家にいる間、直接会えなくても、家族全員で電話をつないで話しています。
本当に些細なことです。でも、こういう配慮を挟むかどうかで、本人の受け取り方は変わると思っています。
このような対応をとることによって、本人の中では**「呼ばれなかった」ではなく「自分の意思で仕事を選んだ」**になる。
疎外感を持たせず、自尊心を傷つけずに、自立を支える。
自立させることよりも、自立した後にどう関わるかのほうが、難しいのかもしれません。
難しいのは、親心のとおりに動けないこと
グレーゾーンの子育てでは、本人の成長の変化をよく観察する必要があります。
その変化に気づいたうえで、今何が最適なのかを考えて判断する。
「家族なのだから帰ってくればいい」という素直な行動が取れない。親心のままに動けない。
そこがとても難しいところだと思っています。
言い換えると、判断の基準を「家族としてどうしたいか」から「今の本人にとってどうか」に置き換える必要がある、ということです。この置き換えは、頭で分かっていても気持ちがついてきません。
よくある疑問
帰省させないのは、かわいそうではありませんか
かわいそうかどうかではなく、その判断が本人の自立に向かっているかで考えるようにしています。
うちの場合、迎えに行った結果として仕事を失いました。本人の人生にとって一番のマイナスポイントは、せっかく続いた仕事がまた終わることです。
また、これは「会わない」という意味ではありません。うちは電話をつないでいますし、時期をずらせば会えます。避けているのは帰省そのものではなく、自立が固まっていない時期に、長く実家に置くことです。
どのくらいの期間なら大丈夫でしょうか
明確な日数は、私には言えません。うちで問題になったのは日数そのものよりも、仕事の戻る日を本人が決められていなかったことでした。
私が帰る日になっても弟が動かなかった、というのがまさにそれです。行きは家族が迎えに行き、帰りは本人任せになっていました。
いつになったら普通に呼べるようになりますか
うちでは、本人から「仕事があるから帰れない」と言えるようになったことを、一つの目安として見ています。
帰りたい気持ちを我慢して仕事を選べるなら、実家に来てもまた職場に戻れる可能性が高い。 ※正直うちの家族も模索中の段階です。
これはうちの基準なので、そのまま当てはまるとは限りません。ただ、「日数」や「年数」ではなく「本人がどう振る舞ったか」で見るという考え方自体は、他のご家庭でも使えると思います。
呼ばないことを、本人にどう説明していますか
もちろん説明なんてしていません。
説明すると「あなたは呼ばれない対象だ」と伝えることになってしまいます。うちがやっているのは、説明する代わりに、会えない期間も家族の会話に入れておくことです。
おわりに
子どもの自立を目指すことは、間違っていません。うちの家も、そこを目指してきました。
ただ、自立した日にすべてが終わるわけではありませんでした。むしろ、そこからの関わり方のほうが難しい。
長期休みは、その難しさが一番はっきり出る時期だと思っています。
家族が集まる時期に、あえて呼ばない判断をするのは、気持ちのいいことではありません。それでも、本人が今いる場所で立っていられるほうを選ぶ。うちはそうしています。
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