2026-08-25
境界知能の子の仕事の探し方|履歴書も面接も続かなかった弟が自分で見つけてきた方法
はじめに
学校を出た後、仕事をどうするかという話が必ず出てきます。
求人サイトを開いて探しているのは親のほう、という家庭は多いと思います。うちもそうでした。
私の弟は26歳で、IQは68です。診断は軽度知的障害で、家族の中では「グレーゾーン」と呼んでいます。弟は今、実家を出て一人暮らしをしながら働いています。
一般には、履歴書を書いて応募して面接を受けるという流れが正しい仕事の見つけ方とされています。うちもその形を目指していました。
ただ、弟が今続けている仕事は、その流れでは見つけていません。
結論:正規のルートでの就職は、自立の必要条件ではなかった
先に結論を書きます。
うちの弟は、履歴書を書いて応募するという方法では仕事が続きませんでした。今の仕事を含めて、家を出た後に就いた仕事はすべて人とのつながりの中から本人が自分で見つけてきたものです。
そして今の現場は1年ほど続いています。
この順番を見て私が思っているのは、正規のルートで就職することは自立の条件ではないということです。
最初の就職口は親が探していた
弟は支援学校を中退しています。その後、最初のうちは母親の伝手で地元の仕事に入りました。並行して、履歴書を書いて応募もしていました。
どれも長くは続きませんでした。
何がどう続かなかったのかは仕事が続かない|境界知能の弟が転職10回した記録に書いています。職種そのものより、続かない理由のほうが記事にする価値があると思って書いたものです。
この頃の仕事は、探してきたのが親の場合でも、履歴書を書いた本人の場合でも、結果は同じでした。
家を出た後、自分で友人に連絡するようになった
変わったのは、弟が実家を出てからです。
その経緯は境界知能の子が自立しても、親は終わらないに書きました。母が鍵をかけた夜があって、そこから弟は県内の別の街に移りました。
家を出た後、弟は自分から友人に連絡して仕事を取ってくるようになりました。最初は建設現場でした。
元からやり取りのあった友人だったと思います。その流れの中で弟が自分で相談したのだろうと私は見ています。ここは本人に細かく聞いたわけではないので、私の推測です。
その後も何度か辞めています。ただ、その全てが人伝で見つけた仕事でした。求人に応募して入った仕事は、そこには一つもありません。 ※正確には仕事がない時期もありましたが、その時はタイミーで凌いでいたそうです。
なぜ、人伝だと続いたのか
ここから先は私の考えです。
履歴書と面接は、その人を紙の情報と短い時間で判断する仕組みです。学歴と職歴が並び、面接で受け答えを見られます。弟が一番不利になる形だと思います。
一方で友人経由の場合、相手はすでに弟を知っています。何が苦手で、何なら普通にやれるかを、説明する前から分かっています。弟の側も、初対面の相手に一から自分を説明しなくて済みます。
そしてもう一つ大きいのは、その仕事が「自分で取ってきた仕事」として本人の中に残ることだと思っています。
親が見つけてきた仕事は、辞めても本人の中では親の話のままです。自分で連絡して入った仕事は、辞めるときも自分の判断になります。この差は、続くかどうかに効いていたのではないかと思っています。
人伝なら安心、という話ではありません
ここは併せて書いておきます。
弟は、自分で仕事を見つけてくるようになった後に、反社関連の会社に入ってしまったことがあります。暴力を振るわれて辞めることになりました。この件はニュースにもなっています。
人とのつながりから仕事に入るということは、そのつながりの質がそのまま仕事の質になるということです。弟は人に好かれて友人も多いのですが、その広さが本人を守ってくれるわけではありませんでした。実際に何度も利用されています。そのことは境界知能は騙されやすい・人間関係でつまずくに書きました。
だから私は、人伝のほうが良い方法だと言いたいわけではありません。うちの場合はその形でしか続かなかった、という事実があるだけです。
親が見る対象を、求人票から本人の関係に移す
親が見るものを一つに絞るとすれば、私は求人票ではないと思っています。
社会が教えてくれない、本当のこと。
きょうだい児が30年見てきた真実を、1冊にまとめました。
見るのは、本人が困ったときに自分から相談できる相手がいるかどうかです。
弟が自分で仕事を取ってこられたのは、そういう相手が近くにいたからです。仕事の情報そのものではなく、相談できる関係が先にありました。求人は探せば毎日出てきますが、こちらは急には作れません。
うちの家族が意識してその関係を作ったわけではありません。弟が元から人と関わるのが得意だったというだけです。だからこれを他の家庭で再現できる方法として書くつもりはありません。
勉強を熱心に教えている親を見て私は思うのですが、勉強よりも対人関係に関する教育をしていくべきだと思います。
また、そこにはコミュニケーション能力や自尊心など勉強以上に大切な要素が大きくあるのです。
勉強ができたからといって、社会で生きていく本質的な力には結びつかない。弟からそんなことを私は学んだのです。
全部を家族が引き受けなくてよかった
もう一つ、この経緯から分かったことがあります。
本人が本気になれば、自分で仕事を見つけてくることはできるということです。
私たちは長い間、仕事は家族が用意してやらないと無理だと思っていました。実際には、家を出て自分でやるしかない状況になったとき、弟は自分で連絡を取って仕事を持ってきました。
過保護にすることや、家で養い続けることが本人の自立につながるとは、私はもう思っていません。そのことは境界知能の子が自立しても、親は終わらないにも書きました。
ただ、今の現場が1年続いているというだけで、この先も続く保証はありません。うちの家族も今の距離感を模索している段階です。
よくある疑問
障害者雇用や就労支援は使わなかったのですか
弟は使っていないと思います。障害者雇用も、就労移行支援やA型・B型といった枠も、本人が利用したという話は聞いていません。
これは制度が要らないという意味ではありません。うちの弟はたまたまこの形になった、というだけです。制度そのものについては境界知能・グレーゾーンで使える支援制度に書いています。
履歴書を書かせても意味がないのでしょうか
そうは言えません。
うちの場合は履歴書で入った仕事が続かなかったというだけです。書き方が悪かったのか、入った先が合わなかったのかも分けられていません。
私が言えるのは、履歴書のルートで続かなかったからといって、働けないということにはならなかったということだけです。
友人に頼るのは迷惑ではないですか
私も最初はそう思っていました。
しかし、よく考えてみれば私たち大人は自分一人では生きていけません。
必ずどこかのタイミングで家族以外の人間に頼って生きていくのです。
むしろ自分の子供に協力してくれる人間がいることを誇るべきです。
気にするべきなのは頼ること自体ではなく、その相手がどういう人かのほうだと思っています。
親は何もしないほうがいいのですか
そこまでは言えません。うちも初期は母が仕事を探しています。
ただ、探し続けているうちは本人が探し始めないという面はあったと思います。どの時点で手を引くのが正解だったのかは、今でも分かりません。
おわりに
弟が今の仕事に就いたとき、私たち家族は何もしていません。連絡したのも、話をつけたのも弟です。
正規のルートを通っていないので、履歴書の上ではきれいな経歴になりません。それでも、自分で取ってきた仕事だから続いているという部分は確かにあると思っています。
学校を出た後の進路が思ったとおりにいかないと、この子はもうどこにも入れないのではないかと考えてしまいます。私もそう思っていました。
うちの弟は、そのルートを一度も通らないまま働いています。
関連記事
一人でできる支援カウンセリング書
グレーゾーンの子と家族の歩き方
きょうだい児が制度もネットも探し尽くした末に辿り着いた、グレーゾーンの子への接し方の「本質」。
読み終えたら、もう情報を探し回らなくていい。
リリース記念価格・購入後すぐ読める(スマホ・PC)
コメント
ヨゾラ
きょうだい児が家族と一緒に作っているサービスです。生きづらさを感じている人に、その人に合った答えを届けます。
ヨゾラについて詳しく見る →