2026-09-18
境界知能の苦悩|暴れた弟が一人で泣いていたことを私は知らなかった
はじめに
子どもが暴れる。物に当たる。家族に強く当たる。
そういう時期がある家庭は、うちだけではないと思います。
その最中、家族はだいたい「やられている側」にいます。
私もそう思っていました。困らされているのは私たちのほうだと。
この記事は、その認識が一度崩れた話です。
私の弟は26歳でIQは68です。診断は軽度知的障害で、家族の中では「グレーゾーン」と呼んでいます。
妹から聞いた衝撃の事実
先に断っておきます。
これから書く場面を、私は見ていません。 この事実を知ったのは、ここ最近のことです。
見ていたのは8つ下の妹です。私はその話を妹から聞きました。
弟がまだ実家にいて、社会人になってかなり前半の頃の話です。
妹との険悪な雰囲気
弟はその頃、知り合いのところで働いていました。
仕事の前日、弟は隣町で友人と遊んでいてスマホを失くしました。
夜中、弟は妹の部屋に来て 「スマホを失くしたから、友人に連絡してくれ」と頼みました。
妹は「無理」とだけ言った
妹は断りました。
それまでに積み重なったものがあり、妹は弟の行動にもう呆れていて、関わりたくなかった。そういう状態でした。
8つ下の妹が、その年齢でそこまで消耗していた。それが当時のうちの状態です。
スマホをなくしたショックから大暴れ
次の日の朝、もう仕事に行かなければいけない時間になっても 弟はトイレにこもっていました。
そこへ、雇い主が迎えに来てしまいました。
そして弟は大暴れしました。
弟の中の苦悩
弟が暴れることは、私も知っていました。
物に当たる。家族に強く当たる。そういう時期があったことは、他の記事にも書いてきました。
だから、この話をここまで聞いた時点では私の中で既に知っている出来事の一つでした。
しかし、その後の弟の状況は初めて聞き衝撃を受けました。
弟は部屋で震えながら頭を抱えて泣いていたそうです。
私はそれを知りませんでした。
家族の認識が書き換えられた瞬間
それまで妹は迷惑をかけられて辛いのは自分と母だけだと思っていました。
だからその光景が衝撃だった、と言っていました。
妹はその時初めて弟も辛いと認識できたそうです。
私が思ったこと
ハンディを持っていることで思うように生活がうまくいかない。 このことは理解していましたが、一人の成人した大人の男が人知れず泣いている。 これはかなりの苦悩だと、改めて再認識した衝撃の出来事でした。
弟にはできないことがたくさんあります。
その中に、他の人には理解できない葛藤や苦難が、本人の中にあるのだと思います。
感情の複雑性は、近くで過ごしている家族でさえ理解できない。
この事実を知った時に一般的な行政や民間サービスでは解決できないのは当たり前だと 再認識できたのです。
「困らせている人」と「困っている人」は同じ人だった
家族から見ると、暴れている時の本人は「困らせている側」に見えます。
実際、家族は困っています。それは事実です。
ただ同時に、本人の中でも何かが起きている。
うちの場合は、それが泣いている姿として妹の目に入りました。
見えなければ、そのまま知らずに終わっていたでしょう。 実際、私はこの事実を知らずに生きてきました。
家族にできること
ここまでを踏まえて、私が今の時点で考えていることを書きます。
まず、本人が平気そうに見えても、それは平気だという証拠にはならないと思います。
暴れた、怒った、黙って出ていった。
そういう行動の裏側で本人が何を感じているかは、家族にも見えません。
次に、見えないことを前提にした対応を心がけるほうがいいと思います。
ハンディの有無に関わらず人間の感情を全て理解するのは不可能です。
よく観察することで傾向は見えてくるかも知れませんが 全てを把握できると思わないことが長期的な支援には欠かせません。
何事も決めつけずに、冷静になって対応することを心がけてほしいと思います。
よくある疑問
きょうだいが冷たく対応してしまいました
うちの妹もそうでした。
夜中に友人への連絡を頼まれて、「無理」とだけ答えています。
私はそれを間違いだとは思いません。
きょうだいは支援者ではありません。同じ家で消耗している側です。
きょうだい児が抱えるものについては実家に帰るとしんどいにも書きました。
暴れるのが本人のせいではないなら、放っておけばいいのですか
そうは思いません。
本人の中に葛藤があることと、周りが被害を受けていいことは別です。
うちも止めてきましたし、止めるべきだったと思っています。
感情の爆発が続いた時期のことは境界知能の子供がキレやすいに書いています。
おわりに
弟が暴れていたことは家族全員が知っていました。
そのあとで泣いていたことを知っていたのは、たまたまその場にいた妹だけでした。
26年同じ家にいた私が、知らなかったのです。
本人の中で起きていることは、そばにいても見えません。
見えていない部分があるかもしれない、と思って常にPlan Bを考えておくこと。
今の私にできるのは、そこまでだと思っています。
コメント
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